GAP 1969 MAGAZINE

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左からyoko、act、Paula、MATCHA、ELVIS、SZK、mai

チームfancyHIM
座談会

Gapが取り組むLGBT*へのサポート活動の一貫で、4月某日、fancyHIM*に関わるメンバーが、Gapのオフィスに集まり座談会を開催!
fancyHIMというイベントからスピンアウトし、あらゆる性やコミュニティのあり方から国内外のカルチャーシーン、さらには個人のスタイルの持ち方に至るまで、「LGBT」やfancyHIMの枠を越えて熱い議論が交わされました。

*LBGT レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーをはじめとする、セクシャル・マイノリティの総称。
*今年11年目を迎える、アンダーグランドにしてモンスターパーティ。 いま東京で最もカッティング・エッジなパーティと言われていて、その勢いは留まる事を知らない。 新宿2丁目を拠点に”東京から世界にカルチャーを発信する”オリジナルパーティ”をテーマに開催。毎回違ったテーマと、国内外からのスペシャルゲストを招き、常に新鮮で非日常的な空間を作り出し、まさに大人のテーマパークとなっている。またfancyHIMから排出されメジャーになったアーティストも数多く、様々な分野で活躍している。

Interviewer:NAOKO OGAMINO
Photo:MASAHIRO ARIMOTO
Text:VIOLA KIMURA Edit:RHINO INC.

座談会参加メンバー

  • SZK(シズク)
    DJ(fancyBOYS)

  • ELVIS(エルビス)
    DJ、サウンドクリエイター、デザイナー

  • MATCHA(マッチャ)
    DJ、セレクトショップCANDYスタッフ

  • act(アクト)
    DJ、
    Happy Socksスタッフ

  • yoko(ヨウコ)
    actの友人。
    こども英会話教室スタッフ

  • Paula(パウラ)
    元アパレル販売員、
    映画関連会社へ転職予定で有休消化中

  • mai(マイ)
    Paulaの友人。
    アパレル関係


ボーダーラインはどこにある?

──ファッションや音楽の世界を牽引する人々の中には、いわゆるセクシャル・マイノリティと呼ばれる方も多いですが、業界や地域環境によって周囲の捉え方もさまざまですよね。みなさんはこれまでの人生でまわりとの壁を感じた体験 はありましたか?

SZK:僕は無かったですね。何も考えないで生きてきたので(笑)。

act:私はありました。高校時代は女の子のことが好きっていう感覚はなかったのですが、女の子からものすごいモテたんです。なので自分が人としていいなと思った子たちと付き合ってきました。大人になってからは男の人のことが好きなときもあるので、今はどっちでも良いかな、と思っています。とはいえ、地元に暮らし続けていたら色々と難しいかもしれません。絵が好きだったのでよく描いていて、山も大好きだったので眺めたり登りにいったりしていましたね。

yoko:私たちは群馬出身なんですが、彼女は東京でも色々と大変な時期があったみたいで。「地元に戻れば?」という話をした時期もあったんですけど、今の彼女には東京が合っているのかな、と思います。

act:地元は無理だね(笑)。噂になっちゃうよね。多分、私みたいに中途半端にメンズライクな人だと、性転換(編注:性別適合手術)しちゃう人が多いっていう気がするんです。だから、まわりからの誤解を受けやすい。

Paula:私も群馬が地元です。高校時代までは完全にクローズドでした。大学に進学して、実際にLGBTの友だちが出来て、ようやく自分のことも受け入れられるようになって。みんな普通の人たちじゃん、わたしも普通だったわ、って気づいて。それからは、まわりとの壁を感じなくなりましたね。地元にいても、コミュニティに入れたら少しは過ごしやすくなるのかな。

MATCTA:僕は沖縄出身で、大学から東京に住んでいます。地元の高校でセクシャルオリエンテーションの授業を受ける機会があって、LGBTといった概念について知ってはいました。でも東京と違って、そういった人たちのコミュニティはありませんでしたね。ファッションシーンはLGBTと言われる人たちが引っ張っていっているけど、地元でまわりにファッションが好きな人もいないし、音楽のことを一緒に話せる人も少なくて、自分の殻に閉じこもっていましたね。

でも東京に出てきてからは二丁目に遊びに連れてってもらって世界が変わって。海外旅行も好きで、向こうへ行ってもゲイタウンのクラブで遊んでいます。そこもとてもオープンな雰囲気で刺激がありますが、東京も少しずつ自分を出しやすい環境になってきたので、これからが楽しみです。

ELVIS:自分はウクライナ出身で、小学校の後半から日本で育ちました。ウクライナは元ソ連ということもあって、セクシャルマイノリティに対する偏見がとても強くて。国が独立して現在どうなっているのかはわからないけれど、物心ついた頃に帰ったときは、まわりから、特に男性から、厳しい視線を強く浴びせられました。型にはめられて生きてきた人たちだな、と感じました。男性とはこうあるもの、女性とはこう接するもの、という共通意識はトラディショナルな文化である一方で、自分たちのような人たちは異端として見られてしまうというのが現実だと感じました。

マドンナのダンサーとして踊っているKAZAKY(カザキー)が登場してからは、少しは状況が改善されてきたと思います。エンターテイメントの一部としてそういう人たちがいる、っていう認識が広がったはず。いざ街中で遭遇するとなると、まだ日本ほど周囲に認められてないとは思いますけどね。

act:私は強い偏見を受けたことがあまりないから、いいほうだと思う。テレビドラマで性同一性障害について取り上げられるよりもずっと前に学生だったのもあって、保健体育の授業でLGBTについて学ぶ機会もありませんでした。あのドラマが放送されてからは、あのイメージが世に広まってしまって、私も「スカート履きたくない人」みたいに見られちゃってましたね(笑)。

ELVIS:日本のメディアがゲイの捉え方を画一化してしまっているのも良くないですよね。「ゲイ」と聞いて、「あのタレントたちみたいに面白いんでしょ」「おネエなんでしょ」と漠然なイメージを持たれることも多いと思いますが、そうした人たちも結構男前だったりする。一人ひとりみんな違うんですよね。

act:男性はアイコン的存在になる人が多いけど、女性はまだそんなにいなくて、周囲の理解を得るのに難しさを感じます。私くらいメンズライクなタイプはまだしも、フェミニンなタイプの人は苦労していると思う。

ピースフルな社交場の存在fancyHIM

──フェスとかレイブなどで隣の人と目が合うと笑ったり、知らない人でもハグしちゃうピースフルな雰囲気があったかと思いますが、今のクラブからはそれが消えているのを感じています。でもfancyHIMは違いますよね。

Paula:ベルリンとかヨーロッパのライブに行く機会があったときに、すっごいかっこいいな、東京にはないなって思っていたのですが、帰国後fancyHIMを知って、東京にもこういうクラブがあったんだ!って思いましたね。嬉しかったです。

クラブは、男性のお誘いとかが結構あったりするんですけど(笑)fancyHIMはそういうのがなくて。新宿二丁目なんかのガールズオンリーのクラブに行くと、それはそれでゲイとレズビアンの間の壁をすごく感じるんですが、fancyHIMに行くと、それが全然無いんですよね。性別関係なくひとりの「人」として見てもらえるというか。渋谷のクラブでもガールズオンリーのところでも「女」として見られて、常に「女」がつきまとってるんだけど、fancyHIMみたいなミックス系で音寄りの場所だと、性別関係なく楽しめるんです。はじめてゲイ友だちを作ることもできて。すごい感動しました。

Paula:yokoさんは二丁目で遊んだりするんですか?

yoko:あまり無いですね。そういう情報がなかなか入ってこないので。ストレートなのに行っていいのかな、とか思って。actが友だちだから、時々話を聞くことはありますけど。

act:前に渋谷でイベントをした時に、二丁目じゃないところで、という企画だったので、結構ストレートの友だちも来てくれて。一緒に踊ったりしてくれて。そういう場所がもっと増えていったらいいのにな、と思いますね。

──ところで、fancyBoysは今回で10周年になりますね。おめでとうござい ます!以前にGapのストライプニットをプレゼントさせていただいたのですが、fancyHIMのイベントに伺ったら、クマのコスチュームになってて驚きました。とても可愛くリメイクしてくださいましたよね。

2014年TOKYO SUPER STAR AWARDSに参加いただいた際のGapアイテムのリメイク

SZK:ありがとうございます!

mai:あのコスチュームって毎回どうしてるんですか?

SZK:あれはほぼ毎回、相方のレオくんが考えて作ってくれていて、それに合わせて自分が服を用意するという感じです。

mai:すごい!クオリティ高いですね。

カテゴライズすることに意味はあるのか?

──性のあり方は「LGBT」以外にも細分化されてますよね。例えば私自身は、異性同性問わずに好きになることがありますが、バイセクシャルではないと思ってるんです。ある時は女性が、ある時は男性が好きで。自分自身のことを、他人に決められたカテゴリに当てはめて説明するのって違和感がありますよね。

act:人に自分たちのことを説明するのに、ゲイやレズビアン、ストレートとかカテゴリ分けしなきゃいけないのが大変。私も今までストレートの人としか付き合ってきてないんですよ。だから彼女を紹介するときに、どういう女性が好きなの?って聞かれたりすると、型にはめられているみたいですごく可哀想だった。そういうのじゃなくて、私だから付き合ってくれてたのに。

mai:そうですね。その人が好き、っていうのが大きい。男性もそのうちいけるかな、とは思うんだけど、どうかな(笑)。

Paula:自分を分類しちゃうとさ、そこから出られなくなるよね。自分をその檻に入れてしまって。

act:そこが凄く難しい。かっこわるい自分になっちゃうというか。

──最近、一般の人に理解してもらえるように、カテゴライズを詳細に定義付けしている記事がありますが、ストレートもそのうちの一種とも考えられますよね。でもそういうのって意味があるのかなと感じてしまいます。好きな人が好きでいいんじゃないのかな。分類分けすること自体がナンセンスでは、と。

Paula:多分それを見て自分がどうか、って判断する人もいて。ジョニーデップさんの娘さんがそうですよね。セクシャルフルイド*、っていうんでしょうか。

ELVIS:同じ気持ちですね。属性を分けたがるのって人間の特性だなと思うんです。自分は差別されているからこそそういう発言を聞いたことがあって。だんだん区分することに疲れてきちゃうし、そういう環境にいて自分はどの分類か、って話すことにもうんざりしてきちゃう。
*好きになる相手の性別が流動的で、その相手によって変わること。

彼女いますか、っていう質問には「(女性に)興味ないです」って答えるんですが、そのときの相手のリアクションでその人とその後つき合っていけるかが決まりますね。プライバシーなことだから。自分は相手にそういうことを聞きません。

多様性を越えて、自分らしく生きるには

mai:座談会のはじめに、地方でカミングアウトできずに悩んでいる人が多いという話が出ましたが、私は悩んでいるほど悩むことはない、と思います。都内にいる限りはそこまで酷い差別的な扱いは受けないし、むしろまわりはカミングアウトし始めてて。隠す必要も悩む必要もない。

彼氏、彼女という呼び方が厄介で、カミングアウトするつもりじゃなくてもばれてしまうこともありますが。

act:私もそれで周囲にバレたことがあります。髪が長い音楽好きの女の子とつき合っている時に、「彼氏いるの?」と聞かれて「ロン毛のバンドマン」って答えたんですよ(笑)。そうやって軽く誤摩化したら、ずっと嘘をつき続けなくちゃいけなくなってしまって。ある日、仕事上がりにその彼女と帰っていたら、「もしかしてロン毛のバンドマンって彼女のこと…?」って、バレてしまいました。でも、その一件の後に会社で受け入れられるようになってからは、「もっと思いっきりメンズライクにしたら?」と言われるようにまでなって。すごく楽になりましたね。

yoko:そう、actはオープンにしてからどんどんかっこよくなった。

Paula:自分らしくいられたほうがみんなかっこいいんだなと思う。都会に住んでいればmaiちゃんのような感覚になるのもわかるけど、田舎ではコミュニティに属せないと難しさもあるかな…。ただ、actさんとyokoさんみたいな関係の、本当の友だちが一人だけいれば良いのでは、とも思う。別に大々的にカミングアウトしなくとも。それが地方で生きる術かな。

MATCHA:僕も同意見です。

ELVIS:犯罪を犯さなければ何でも良いんじゃないですかね(笑)。どうしてくのが良いかは、悩みの類いにもよりますよね。性格や、どんな環境でどんな生活をしているかによって違うはずで。そのうち悩んでいること自体がばかばかしくなるかもしれませんし。人間って悩むものだから、悩んでもいいんじゃない?とも思います。落ちるところまで落ちたら、そこから人格が生まれる訳ですし。一人ひとりのライフスタイルに合ったやり方で過ごしていければいいんじゃないですかね。と言っても、いまの10〜30代くらいの世代だと、そこまで悩んでいる人は多くないんじゃないかとも感じます。

act:うん。それから、新宿の人通りが見えるお店で働いてるんですけど、通行人を見ていて、ゲイの人っておしゃれで綺麗だな、いいな、と思うことが多いです。ストレートでない人たちは、対象になる人からの見られ方をよく分かっていますよね。

一同:確かに!

──パートナー探しは限られたマーケットになるし、自分の美意識を持っている人が多いですよね。

Paula:みんな自分を確立してる。fancyHIMに集まる人たちは世間一般で流行ってますよ、っていうスタイルをしていないから。同じタイプの人はあまり集まっていないですよね。普通のクラブに行くと似たような人たちが沢山きているけど(笑)、そうじゃないのが面白いところでもあります。私も以前アパレルで働いていましたが、一般的にどんなスタイルが良いか、みたいなことを研修で話さなきゃいけないのは悲しかったですね。ゲイだろうと何だろうと、自分のスタイルが確立しているのがかっこいい。

SZK:僕はまわりから「歩くカミングアウト」と言われていて(笑)。一言発するとすぐゲイだってバレちゃう。でもそれについて特に悩んではいません。誰でも、自分らしく生きていれば良いと思います。

──みなさん、貴重なご意見をありがとうございました!


参加した7人のバックグランドを聞くだけでも、人の多様性というものを「LGBT」といった概念でラベリングすることは不可能であることを思い知らされた今回の座談会。
性的指向に限らずあらゆるダイバーシティが混在しているこの世界で、あなたは目の前の人とどう関係を築きますか?Gapはこれからも様々な取り組みを通じてポジティブなメッセージを発信し続けます。今後の展開については、引き続き『Gap 1969 Magazine』をチェックしてみてください。

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http://www.fancyhim.com/


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