GAP 1969 MAGAZINE

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INTERVIEW

細尾真孝
vol.8

『息をのむ繊細な美しさと
ダイナミックな迫力。
独創的な切り絵作品を生み出す
注目の作家。』

東京都/切り絵作家

福井利佐RISA FUKUI

京都

日本各地で活躍する人々の個性にスポットを当てる『INTERVIEW』シリーズ第10弾。今回は、独自の切り絵スタイルで、新たな作品を発表し続ける作家、福井利佐さん。繊細で緻密でありながら、今にも動き出しそうな迫力と立体感。その独自の切り絵スタイルはどのように生まれたのでしょうか。アトリエにて、作家として活動するきっかけや、最近の転機、日々大切にしていることなどをお伺いしました。

Photo:ARI TAKAGI Text:NORIKO OBA
Edit:RHINO INC.

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幼いころから漠然とあった手を動かす仕事をしたいという想い。

── まず最初に、福井さんが切り絵という道を選んだきっかけを教えてください。

中学生のときに「切り絵クラブ」に入っていたことが原体験としてはありますが、ただ、そのときに特に将来は切り絵作家として、と思っていたわけではないんですね。幼いころから美術系に進みたかったので、大学はグラフィックデザイン科を選び、そのときに初めて昔切り絵をやっていたことを思い出して、「ひょっとしたら、切り絵はグラフィック的にかっこいいのでは」と思ったことがきっかけです。そして、実際に取りかかってみたら、楽しく、こまごまとした作業が性に合っていたことが大きいと思います。

── 美術の道に進みたいというのは、幼い頃からあったのですね。

環境の影響もあると思うのですが、実家が美容室だったので、小さいころから『Olive』や『ELLE JAPON』などの雑誌がすぐ近くにあって、デザインに触れる機会も多かったように思います。私自身も民藝の作品などが好きだったり、母と祖母がお客さんの髪をカットする姿を見るのも好きでしたし、父の趣味も盆栽で、私も手を動かす仕事をしたいな、という想いは漠然とありました。

── みなさん、ハサミを持っていますね。

そうですね(笑)。でも、私自身は大学を卒業して作家になろうとは思っていませんでした。まわりには、在学中から公募展などに入賞して華々しくデビューする人もいて、自分にはそういう才能はないと思っていましたので。


今のスタイルを習得し、作家活動の入り口となった卒業制作。

── 何がきっかけで、作家活動への方向転換があったのですか?

卒業制作で「個人的識別」という作品をつくり、私なりに新しいものを習得できたと思ったことがきっかけです。

大学の卒業制作「個人的識別」

── さまざまな年代、性別の人の顔を立体的に表現した「個人的識別」シリーズは、新しい切り絵として話題になりました。

切り絵というと、一般的には瓦屋根が並ぶ風景などのイメージがありますよね。私自身、民藝的な切り口のものが切り絵だと思っていましたし、実際に作品をつくるときにも、これまでのものを踏襲してつくっていました。でも、そうやって出来上がったものは、誰かの真似のような、どこかで見た事のあるような作品で、オリジナル性がまったくなかったんです。

── まずそこから考えていったのですね。

私は現代を生きていて、西洋的なものも多く目にしてきたのだから、自分なりの現代の切り絵をつくりたいと思いました。昔から静物よりも人物に興味があったこともあり、そこから少しずつテーマが絞られました。

── 最終的に、「顔」に行き着いたのは?

そのころあるサイエンスブックを見ていて、顔、特に皮膚のシワには“個別識別”が現れている、との書いてあったことに心惹かれたんですね。そのシワから、年齢はもちろん、人種や、さらには乾燥地帯で育ったのか、農業をしていた人なのか、オフィスレディなのか、などの環境なども識別できると。その人の人生の背景を表す“皮膚の線”を、切り絵で表現してみたい、と顔をテーマにすることに。実際は、ひとりずつの皮膚のシワを忠実に再現するというよりは、インスピレーションを頼りに切っていきました。

── 完成品は、「JACA日本ビジュアルアート展」で特別賞を受賞。海外展も実現したそうですね。

はい、この年のJACA展の巡回展がメキシコだったので、一緒に展示させていただきました。この作品ができていなかったら、今の私はないと思います。