GAP 1969 MAGAZINE

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INTERVIEW

今年は、迷走します。

── そのアドバイスを受けて、人気商品「Basic」シリーズが生まれたのですね。始めからいい反応だったのですか?

はい。結果は思いがけないほどの早さで出ました。さきほども言いましたが、会社員時代に伝統的な七宝作品ばかりを見てきた感覚からすると、1色で、しかもこんなにも小さな範囲で焼くというスタイルは、あまりにもシンプルで、「これは受け入れられるのかな」って半信半疑だったんですよ。でもつくったらすぐに取引先の件数も受注数もぐんと増えて。

製作は、形がシンプルなだけに、どうやったら七宝のやわらかさが出るか、そこはかなり試行錯誤しました。手で焼くぽてっとした厚みや揺れる感じを引き出すためにも、それ以外の金属の部分は、ビシッとつくって色の美しさが際立つように仕上げています。

「Basic」シリーズの作品

── 洗練された感じと何ともいえない温かみが絶妙ですよね。ジュエリーのデザインをするときは、どんなことが発想のもとになっているのでしょうか。

散歩をしたり、とにかく必死で手を動かしたりいろいろですが、実は、今ジュエリーの新作に関しては、少し動きを止めて、新しい発想を得るための準備をしているところなんです。

── そうなんですか。

もちろん定番の商品は僕にとっても大切なものなので、これからもつくっていきますが、このスタイルで5、6年やってきた今、少しずつ新しい風を入れたいと思っていまして。独立した当初からずっと忘れない程度に頭の片隅にあった、「アート寄りの作品をつくって勝負したい」という気持ちが、最近ようやくふくらみつつあります。そんな流れもあって最近は片口(酒器)やランプシェードなど少し大きいものをつくっているんですよね。

酒器の作品

ランプシェードの作品

── 今は、変化のときなんですね。

そうですね、意識的に。仕事にいい流れがあることはありがたいことだけど、でもその流れだけに乗っていると、いつの間にか守りに入ってしまって、つまらなくなっちゃうでしょ。僕は特にすぐ現状維持しようとしちゃうから(笑)、そこはがんばってでも崩さないと。だから今年の目標は、“迷走”です。

そうは言ってもついつい、製作にかかる時間と売り上げのバランスを考えてちゃうんだけど、まずはそこを意図的に外すところからモノづくりができたらいいなと思っています。器など今までと違うものをつくって、ふたたびジュエリーに戻ってきたときに新しいアイディアが出てきたらと期待しています。他人事みたいだけど(笑)。それとも重なって、このアトリエも年内で出るかもしれないんですよ。