GAP 1969 MAGAZINE

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INTERVIEW

Qrion
vol.5

『世界で活躍する
話題のトラックメイカー。
淡々と、着実に、大きな目標を
達成していく力』

北海道/アーティスト

Qrion

北海道

日本各地で活躍する人々の個性にスポットを当てる『INTERVIEW』シリーズ第5弾。高校生のときからウェブ上に音源をアップし、有名アーティストとのコラボ作品でも話題のQrionさん。今回は、生まれ育った札幌にお伺いし、音楽との出会いやご自身の性格、またこれからの目標について、21歳の今の心境を語っていただきました。

Photo:ARI TAKAGI Text:NORIKO OBA
Edit:RHINO INC.

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ゲームで音楽をつくることにハマった小学生時代。

── 小さいころの音楽の思い出といえば、どんなことがありますか?

父がミュージシャンだったので、家にはたくさんレコードがありましたが、どんな曲を聞いていたかは、あまり記憶はありません。母が言うには、本当に幼い頃にはクラシックにすごくハマっていて、特にチャイコフスキーのお気に入りのフレーズを繰り返し再生して聞いていたよ、とのことですが…まったく覚えていません(笑)。

── では、小さいころは将来音楽をやりたいという気持ちはなく?

全然なかったです。私、小学生のころは弁護士かネイリストになりたかったんですよ。

── 音楽とは全然違いますね。

といっても、深い思い入れがあるわけではなく、弁護士を主人公にした「逆転裁判」というゲームが好きで、そのなかで弁護士が「意義あり!」と言いながら、激しく動きまわる姿に憧れていたんです。でも、実際はそんなに動きませんよね(笑)。ネイリストは、単純にネイルが好きだったので。

── 音楽に興味が出てきたのはいつごろからですか?

小学3年生のころ、ニンテンドーDSを買ってもらって、そのときに簡単に音楽を作成できるソフトも購入したのですが、それがすごく楽しかったんですよね。鼻歌を録ったものがメロディになったりして。

── ということは、誰かがつくった音楽を好きになるよりも、つくるほうが先だったんですね。

そうかもしれません。そのゲームがすごく楽しくて、ひとりでずっとつくっていました。音楽をつくることに加えて、こういう作業をひとりでチマチマしているのが性格に合っていたんですよね……オタク気質なので(笑)。


高校時代は、黙々とバスのなかで曲づくり

── 高校生になると、さらに本格的に音楽をつくり始めますよね。

…本格的、というかこれも最初はiPhoneのアプリから始めたんです。よくわからないけどおもしろそうだからやってみよう、と。知らない機械を触って楽しんでいる感じでした。

── できたものを自分で聞いて、どう思いましたか?

いいじゃん!(笑)。

── 友達に聴いてもらったり?

いえ、まったく。音楽をつくっていることは、親友ひとりふたりをのぞいては誰にも言えませんでした。高校時代、まわりの子たちは、部活もがんばって、学校行事にもアクティブに参加して、という活発な人ばかりだったので、自分の趣味はなんだか恥ずかしくて言えなかったです。

── 家でつくっていたのですか?

いえ。毎日帰りのバスで、いちばん後ろの窓際の席に座って、そこでずっと携帯片手に没頭していました。最近になって、私の活動を知ってくれた人もいるようで、特にサカナクションのリミックスをしてからは、高校の友達からも「同じクラスだったよね?!」などとコメントがきたりして(笑)。

── まさか音楽活動をしていたとは知らないクラスメイトは驚いたのかもしれませんね。つくったものを発表していこうと思ったきっかけは何ですか?

私が使っていた音楽アプリのなかの機能に「sound cloudに投稿する」というボタンがあったので。


大人しい高校生が、一躍有名トラックメイカーに!

“sound cloud”というのは、自分がつくった音楽をアップロードして世界中に発信したり、ほかの人の曲をダウンロードできるサービスで、プロのミュージシャンからアマチュアまで、今やユーザーは3億人とも言われています。ある日、その投稿ボタンを…ピッと押してみたんです(笑)。

── そこから始まっていくんですね。

はい。高校2年のときだと思います。最初は聴いてくれる人数も少なかったですが、エジプトなど遠い国の人からコメントが来たりして、「誰かが聴いてくれているんだ」と感動したのは覚えています。それで少しずつモチベーションが変わってきたというか。また聴いてもらいたいから、もっと曲をつくろうと。

── 卒業後も、曲ができたらアップして、という毎日のなかで、ある日音楽プロデューサー、ライアン・へムズワースからコンタクトがあったんですよね。

そうです。一緒に曲をつくろう、と言ってもらって。すごくうれしかったです。

── 実際に一緒にやってみてどうでしたか?

彼のスピード感にびっくりしました。私が上モノのメロディ部分を先に送ったのですが、その4、5時間後にはドラムができたから送るよって感じで、1週間も経たずに曲が完成して。できた曲をsound cloudにアップしたら、やはりライアンはとても有名な方ですから、聴いてくれる人の数も今までとは桁違いでした。これをきっかけに、いろいろな方から声をかけていただいたり、東京のイベントに呼んでもらえたりと展開していったので、改めてすごい方なんだな、ありがたい機会だったと実感しましたね。


時を経て、曲づくりに変化が

── Qrionさんの曲づくりには、どんなことがインスピレーションになりますか?

建築の写真を見ているのが好きで、見ているとテンションがあがるので、そこで気分を高めて曲づくりをすることもあります。

──またまた意外な答えです。それは建築のある風景から“音”を想像する…ということ?

いえ、単純に写真を見ているのが好きなんです(笑)。インスタグラムとかでもそうですけど、写真にフィルターをかけて加工しているものが多いじゃないですか。全体が赤味がかかったり青白かったり、ああいうのが少し苦手なので、撮ったままの色が感じられる建築の写真は、眺めているとホッとするというか、心地よくなるんです。曲をつくる前に眺めていると意欲がわいてくるので。

── それはおもしろいですね。ずっと習慣ですか?

いえ、ここ1、2年です。以前の曲づくりは、もっと感情をぶつけるというか、怒りとか悲しみとかの感情を音楽に投影する感じでつくっていました。でも、ある時とてもお世話になっている札幌の音楽レーベルの社長さんから「そのつくり方をしていると、音楽が仕事になったときに大変だよ」と言われたんです。

そういう感情に頼ったつくり方をしていると、相手の要望に答えなくてはならないリミックスのような仕事の時に辛くなるから、と。その言葉が転機となって曲のつくり方も大分変化しましたね。一歩引いて客観的に捉えたり、感覚の使い方も変わってきたと思います。その分、考え込むことも増えて、以前と比べると曲をつくるスピードは遅くなりましたが…。

同時に、モチベーションを高めるために自分をハッピーな状態にするインプットって何だろう、と考えるようにもなって、そのひとつが建築の写真を見ることなんです。

sound cloud 「tell me」

──リミックスのお仕事も増えているようですね。昨年はGiraffageの「tell me」をリミックスしたことでも話題になりました。

これは原曲が本当に素敵だったので、どうやってこの素敵さを維持しながらも、崩していったらいいのか、音と音の空間の埋め方について悩みながらつくりましたね。自分では、サビの部分のキャッチーさが気に入っています。

── クラブなど大きな空間で聴くと、より気持ちよさそうです。さきほど「曲のつくり方が変わった」とありましたが、今、目の前にいらっしゃるQrionさんは、しゃべり方もトーンもおっとりしていて、以前は怒りを源に曲をつくっていたというのが、どうしても想像しにくいです。

マイペースなのはずっと変わりませんが、DJとしての活動が増えてからは、女性というところばかりが注目されたり、もちろんそれをきっかけに知ってもらえたらうれしいのですが、「Qrionは女だから注目されているだけだよ」と露骨に言われることもあって。そういう時には怒りや悲しさを感じますし、女でDJというところだけが先走って、実態は何やっているのかわからない人にならないように、自分の曲をもっとつくらなきゃとも思います。

── 曲のアイディアはストックしていますか?

パソコンのなかにも入っていますし、街を歩いているときに思いついたらiPhoneのヴォイスメモに残したり、携帯にメモしたりしています。

── 拝見すると、らーーーみーーーどーーーそーーーってメモが(笑)。

思いついたらすぐにメモします(笑)。曲のアイディア以外にも、ライブの反省や思ったこと、何でも書いています。

──Qrionさんの代表曲ともいえる、「Beach」はどのように誕生したのでしょうか?

「Beach」は、札幌のトラックメイカーやDJで各自1曲ずつ制作してCDをつくろうという企画のときに、かなり突発的にできた曲です。私は締め切り前日まで納得いくものができず、「もうこうなったらいつもと違うテイストでやってみよう!」と、集中して2時間くらいでバーーッとつくった曲なんです。そんな経緯だったので、聴いてくれた人の反応も不安だったのですが、Qrionといえば「Beach」という風にもなっていて、うれしいです。

sound cloud BEACH